物理のかぎしっぽ 記事ソース/ガロア拡大とガロア群

記事ソース/ガロア拡大とガロア群

これはrst2hooktailの記事ソース保存・変換用です(詳細).

コンバート

最近コンバートされた結果: HTMLPDFTeX

公開・更新メニュー ▼▲

記事ソースの内容


======================================
ガロア拡大とガロア群
======================================
この記事と次の ガロア群の例_ では、 体の自己同型写像_ で勉強したガロア拡大とガロア群について、もう少し理解を深めることを目的とします。目新しい概念は出てきませんが、役に立つ定理を幾つか考えます。また、ここまでに既習の事柄も、このあたりで一度頭の整理をしてみて下さい。



ガロア群
------------------------------------------------
ガロア群の元を求める際に、次の定理が便利です。


.. important:: 

	 $\zeta$ を $1$ の素数乗根 $e^{\frac{a\pi i}{p}}$ ( $p$ は素数)とします。有理数体 $Q$ に $\zeta$ を添加してできる拡大体 $Q(\zeta )$ に対し、ガロア群は整数の剰余群と同型となり、 $\cal G \it (Q(\zeta)/Q) \sim Z_{p}$ がなりたちます


.. admonition:: proof 

	いま $p$ は素数としていますので、剰余群 $Z_{p}$ は $p$ 次の巡回群 $\{ [0],[1],...,[p-1]\} $ になります。 $x^{p}-1=(x-1)(x^{p-1}+x^{p-2}+...+1)=0$ を考えると、 $\zeta$ は $x^{p-1}+x^{p-2}+...+1=0$ の解ですが、この方程式は $Q$ 上既約で、 $Q$ 上には解を持たず、体 $Q(\zeta )$ は $x^{p-1}+x^{p-2}+...+1=0$ の最小分解体 $Q(x_{1},x_{2},...,x_{p-1})$ になっており、拡大次数は $p$ です。よって定理が成り立ちます。■ 




例1
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
有理数体 $Q$ に、 $x^{5}-1=0$ の解の一つである $\zeta = e^{\frac{2\pi i}{5}}$ を添加して作った拡大体 $Q(\zeta )$ はガロア拡大になっています。 $Q(\zeta )$ の元は $a+b\zeta + c{\zeta}^{2}+ d{\zeta}^{3}+e{\zeta}^{4} \ (a,b,c,d,e \in Q)$ の形をしており、拡大次数は $5$ です。一方、ガロア群 $\cal G \it (Q(\zeta )/Q)$ は、 $Z_{5}$ に同型ですので位数は $5$ です。よって、 $Q(\zeta )$ は $Q$ のガロア拡大になっています。

.. [*] 前定理より、拡大次数が $2,3,5,7,11,...$ の代数的拡大体は、全てガロア拡大だと言えます。


ガロア拡大とガロア群に関しては、体の拡大次数が、ガロア群の位数で表されてしまうわけです。とても美しい関係です。



ガロア拡大の別の定義
----------------------------------------------------------------------
ここまでに、ガロア拡大とは『 $F$ の拡大体 $E$ が、 $E$ の $F$ 上自己同型写像群 $\cal G \it (E/F)$ が $E$ を固定体とし、 $[F:E]=|\cal G \it (E/F)|$ の場合』と定義しました。この定義は分かりやすいものですが、全く同値な定義に言い換えることも出来ます。

【ガロア拡大の定義】

1.  $[E:F]=|\cal G \it (E/F)|$
2. $E$ は $F$ の有限次分離正規拡大体です。
3. $E$ は、 $F$ 上のある分離多項式 $f(x)$ の最小分解体になっています。 


これらが同値な条件であることは、以下に証明します。場合に応じて、分かりやすい定義を使えば良いと思います。二番目の定義を最初に挙げる教科書が多いようです。 $(2. \rightarrow 3.)$ の証明は 体の元の共役と正規拡大体_ で示してありますので、ここでは $(1. \rightarrow 2.)$ の証明を示します。


.. admonition:: proof 

	( $1.$ ⇒ $2.$ ) $E$ の任意の元 $\alpha$ に対し、 $\alpha$ の最小多項式が重解を持たず、かつ $E$ 上で一次式の積に分解できることを示せばよいわけです。 $\cal G \it (E/F)$ は有限群ですので、 $\cal G \it (E/F)$ の元の中で相異なるものを集めた集合 $\{ {\tau}_{1},{\tau}_{2},...,{\tau}_{n} \} $ を考えます $(n \le |\cal G \it (E/F)|)$ 。 $E$ の任意の元 $\alpha$ にたいし、この集合の元による写像を ${\tau}_{i}(\alpha)$ と書き、多項式 $f(x)=(x-{\tau}_{1}(\alpha ))(x-{\tau}_{2}(\alpha ))\cdot \cdot \cdot (x-{\tau}_{n}(\alpha ))$ を考えます。まず各 ${\tau}_{i}$ は全て異なるので、 $f(x)$ は重解を持ちません。また、 $f(x)$ を展開した際の係数は全て ${\tau}_{i}(\alpha ) \ (i=1,2,...,n)$ の和と積で表現されますが、これらは固定体 $F$ の元になっているはずです。これより、 $\alpha$ の $F$ 上の最小多項式 $q(x)$ ( $q(x)=x-\alpha $ とは限りません)は $f(x)$ を割るので、 $q(x)$ は重解を持ちません。よって $q(x)$ は $E$ 上一次式の積に分解できます。これより、 $E$ は $F$ の分離正規拡大体になっています。■


ガロア拡大の表現には、他にも色々なものがあり、教科書によって取り上げ方が様々だと思います。例えば、次の二つの条件が成り立つことも、 $E$ が $F$ のガロア拡大であることと同値であることを示すことが出来ます。


【補足】


1.  $F$ 上既約な $m$ 次方程式 $g$ が、もし一つでも $E$ 上に解を持てば、 $g$ は結局 $m$ 個の解を $E$ 上に持ちます。
2.  $E$ は $F$ の代数的単純拡大体として表現できます。(つまり、 $F$ 上にある代数的元 $\theta$ があって、 $E=F(\theta )$ と書けるということ。)


後で使う都合上、 $1.$ だけ、簡単に証明しておきます。あまり、証明の細かいところにはまらずに、結果だけ了承して先に進んでも良いと思います。


.. admonition:: proof 

	まず必要条件を証明します。 $E$ が $F$ のガロア拡大だとすれば、ガロア群を $\cal G \it (E/F)=\{ \phi _{1},\phi_{2},..,\phi_{n} \} $ のように決めることができ、 $\alpha \in E$ に対し $\phi _{1}\alpha , \phi_{2}\alpha ,...,\phi _{n}\alpha \in E$ が言えます。これらの中から、 $r \ (>m)$ 個を選んで、多項式 $g(x)=(x-\alpha _{1})(x-\alpha _{2})\cdots (x-\alpha _{r} )$ を作ると、 $g$ の係数は $\cal G \it (E/F)$ によって動かされませんから(ガロア群の元は $\alpha _{i}$ を置換するだけなので)、 $g$ は $F$ 上の多項式だいうことが出来ます。ここで $\alpha$ を解とする $F$ 上既約な多項式 $f$ を考えると( $m$ 次多項式とします)、 $g(\alpha )=0$ より、 $f$ は $g$ を割るはずですが、 $g$ の最小分解体が $E$ なので、 $f$ の最小分解体も $E$ になり、既約という仮定より、 $f$ の解は全て異なるはずです。■


.. admonition:: proof 

	次に十分条件を示します。 $E=F(\theta )$ と書け、 $[E:F]=n$ とします。いま、 $\theta $ の最小分解多項式は $n$ 個の解持つはずですので、それを $\theta _{i} \ (i=1,2,...,n)$ とすると、拡大体 $F(\theta _{i}) \subset E$ は、全てのの $i$ に対して $[F(\theta _{i}):F]=n$ を満たし、結局 $F(\theta _{i}) =E$ が言えます。ここで、写像 $\phi _{i} \ (i=1,2,...,n)$ を $\phi _{i} (\theta _{1}) =\theta _{i}$ と定義すると、 $\{ 1, \phi_{1},\phi_{2},...,\phi_{n-1}\} $ は $E$ を $F$ 上のベクトル空間とみたときの基底になっており、 $F$ 上の多項式 $g$ に対して $\phi _{i} g(\theta _{1}) = g(\theta _{i})$ が成り立ちます。これより、 $\phi_{i}$ は $F$ を固定体とする $E$ の自己同型写像だということが出来て、 $E$ は $F$ のガロア拡大だと言えます。■






例2
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
$Q(\root 3\of {2})$ は $Q$ のガロア拡大ではありません。 $Q(\root 3\of {2})$ の任意の元は $a+b\root 3\of {2} +c\root 3\of {2^{2}}$ の形に書けますが、 $\root 3\of {2}$ の共役元である $\root 3\of {2}\omega , \root 3\of {2} {\omega}^{2}$ ( $\omega$ は $1$ の三乗根で $\omega = \frac{1+i\sqrt{3}}{2}$ とします)を含まないため、正規拡大にはなっていないからです。





アーベル拡大体と巡回拡大体
---------------------------------------------------
特に、ガロア群が可換群である場合のガロア拡大体を *アーベル拡大体* 、ガロア群が巡回群である場合のガロア拡大体を *巡回拡大体* と呼びます。



.. _体の自己同型写像: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/FieldIsomorphism/
.. _ガロア群の例: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/GaloisExtension/
.. _体の元の共役と正規拡大体: http://www12.plala.or.jp/ksp/algebra/NormalExtension/


@@author:Joh@@
@@accept: 2007-03-03@@
@@category: 代数学@@
@@id: GaloisExtension@@
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Modified by 物理のかぎプロジェクト PukiWiki 1.4.6 Copyright © 2001-2005 PukiWiki Developers Team. License is GPL.
Based on "PukiWiki" 1.3 by yu-ji Powered by PHP 5.3.29 HTML convert time to 0.009 sec.